
【初心者向け】デザイン思考とは?身近な事例で分かる!ビジネスに求められる理由と実践方法
世界的な企業が取り入れたことで大きな成果をあげ、
日本でも多数の書籍が出版されるなど浸透が進んでいるデザイン思考(Design Thinking)。
皆さんはきちんとデザイン思考という言葉の意味と重要性を理解できていますか?
デザイン思考は具体的なイメージが湧きづらく、取り入れるまでのハードルも高い概念のように思われがちですが、
この記事では身近な日本の具体例や図等を用いながら、デザイン思考について分かりやすく解説します。
まずは「デザイン思考とは?」について、簡単に紹介していきましょう。
デザイン思考とは何か?
デザイン思考のデザインとは「設計」すること
デザイン思考とは、顧客のニーズを理解し、プロトタイピングを用いて行う、創造的なアイデアを生み出すイノベーションのための考え方です。
さらに具体的には、デザイン思考は「仮説を立て、プロトタイプを作成し、ユーザーテストするサイクルを“高速で”まわしてブラッシュアップしながら新たな商品やサービスを作り出す考え方」といえます。
デザインと聞くと、グラフィックデザインやビジュアルデザインといった、デザイナーが「外観をよくすること」とイメージされる方も多いと思います。
しかし、デザイン思考における「デザイン」とは、“設計”という意味です。
例えば、クライアントに「イケてるサイトを作ってよ」と依頼されたとします。
ここでデザイン思考的には、「イケてるとは何か?」を設計する必要があるのです。
それは、「斬新でイケてる」と「トレンド最先端でイケてる」、あるいは「面白くてイケてる」では同じイケてるでも全く違うものになるからです。
なぜ「イケてる」サイトを作りたいのか、その目的や背景は?
そのためにどんな「イケてる」要素が必要?
その要素をサイトデザインにどのように反映させる?
このようにクライアントの要望に合ったデザインを設計するのです。
今、デザイン思考が重要な理由
ビジネスに求められるものの変化
例えば、あなたが新規事業開発の責任者になったとします。
事業をどのように起こしていくか、どんなプロダクトを生み出すか……。
プロダクトを生み出すためのプロセスにおいて、「デザイン思考」は非常に有用な考え方です。
デザイン思考が重要といわれている理由は、「昔と今で人々のニーズが変わったため、従来の方法では人々の求めるサービス・プロダクトを生み出し続けることが難しくなったから」です。
20年ほど前、バブル期までは、人々のニーズはほとんど同じで、いい家、いい車、美味しい食事……など、シンプルなものでした。
新しさのある商品や高性能な商品を出せば、多くの人が価値を感じて購入してくれていたのです。
しかし、現代は私たちのほとんどがスマートフォンを手にする時代。
大抵のものはスマートフォンとお金があれば手に入れることができ、ニーズは簡単に満たすことができるようになりました。
さらに、SNSやアプリによって個人のニーズはそれぞれより狭く、深くカスタマイズされるようになりました。
結果、従来の「広く浅く、より多くの人に受ける商品・サービスを作る」というアプローチでは、人々のニーズを満たすためのプロダクトを提供することが難しくなりました。
そこで、多様化したユーザーニーズに対する解決策を導き出すための考え方としてデザイン思考が注目されました。
デザイン思考が注目される理由
なぜ人々のニーズが変化すると、デザイン思考が求められるのでしょうか?
ぞれは、ニーズが多様化・複雑した現代において売れるモノを作るためには、ユーザーの視点にたったモノ作りが必要不可欠だからです。
生活に必要なモノは大抵簡単に手に入る現代では、ユーザーの視点にたって、ユーザー自身も気づいていないようなニーズを発見しなければ、「新しい」サービス・プロダクトを生み出すことは不可能です。
デザイン思考では、ユーザーの観察/理解から課題を発見します。
そしてアイデアを創出し、プロトタイプの検証と改善を繰り返すことで、サービスのアイデアを磨き込むデザイン思考は、スピード感と量を両立させる問題解決方法です。
人々のニーズが多様化・複雑化した時代の中で、人々が求めるサービスやプロダクトを開発するためには“走りながら考えられる”「デザイン思考」が最適なのです。
■関連記事
新規事業や事業改善で必須のプロセス「デザイン思考」でイノベーションを!
デザイン思考を実践するための手順
ここからは、ニジボックス流のデザイン思考を実践する手順を図を用いながら詳しく説明します!
突然ですが、ダーツをやったことはありますか?
ダーツをどんな風に遊んでいたかを思い出してみてください。
おそらく、ほとんどの人が以下2つのステップで投げていることと思います。
- 的を見ながら狙いを定めて
- 投げる
当たり前ですが、的も見ずにいきなりダーツを投げても、ほとんど刺さりませんよね。
デザイン思考も、同じです。
- 課題を設定して(的を見ながら狙いを定めて)
- 解決策を検討する(投げる)
の二段階で進めていきます。
いきなりアイデアを考えるのは、的を見ずにダーツを投げているのと同じ。
課題設定してから解決策検討するという手順を踏むことが、いいアイデアを創出するために必要なのです。
デザイン思考を具体的に実践する場合、課題設定と解決策検討をさらに細分化していきます。
課題を設定する3つのステップ
共感
共感とは、ターゲットとするユーザーのニーズを深く理解すること。
相手になりきるくらい、その人の普段の思考・行動を知ることが重要です。
具体的には、ユーザーインタビュー等でユーザーのニーズの探索を行います。
情報分析
「共感」によって発見したニーズと、ターゲットを取り巻く環境を整理・分析します。
「どんな人生を送ってきたのか」といったユーザーの背景や、人間関係、生活環境なども鑑みて、ユーザーが「本当に求めている」潜在的ニーズまで深堀りしていきます。
課題定義
情報分析で見えてきたニーズから、解決するべき課題を定義します。
ユーザーが何に不満を感じているのか、サービスのどこがニーズとアンマッチなのかを明確に定義しましょう。
■参考記事:ユーザーインタビューに関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
【保存版】ユーザーインタビューとは?実施する目的やコツ、設計方法までわかりやすく解説
解決策を検討する3つのステップ
アイデア
課題設定の1~3を進めてはじめて着手するのが「アイデア出し」です。
アイデアが現実的かどうか、斬新かどうかなどあまり気にせず、まずは思いつくままにどんどん出して、使えそうなアイデアを絞り込むのが効率的です。
プロトタイピング
1で選抜したアイデア(ソリューション)の試作をします。
プロトタイプ(試作)のいいところは、低予算・高スピードで作成し、様々な可能性を試すことができる点です。
テスト
プロトタイプでユーザーテストを行い、実際に課題が解決できるのかを見定めます。
デザイン思考の手順は「サイクル型」でなければならない
課題設定から解決策検討まで一通り進めたら「これで終わり」ではありません。
プロトタイプをテストした段階で「完璧にユーザーのニーズを満たした」なんてことはほとんどないからです。
必ず、テストの結果には何かしらの問題が出てくるはずです。
そこで必要なのが、デザイン思考の手順を「戻って、繰り返す」こと。
「アイデア」の段階で採用したソリューションが微妙だったら、戻って再度アイデアを練ろう。
「課題定義」の段階で定めたものが本当のニーズとずれていたから、改めて情報分析をし直そう。
このように、6つの手順を何度も、かつ素早く繰り返すことで徐々に精度を高めていくのがデザイン思考で重要なポイントです。
デザイン思考実践のために大切なマインド
デザイン思考は一度やったら終わりではなく、一度やってからがスタートです。
そのため、デザイン思考を用いる際は以下のマインドを持って臨むことが重要、ということを覚えておきましょう。
- まずはやってみる
- 「やり直し」が当たり前と考える
- ユーザー視点を忘れない
なぜ繰り返し、やり直すことが重要なのでしょうか?
それはデザイン思考が、真のユーザーの課題とその解決策を探求するためのプロセスだからです。
デザイン思考のプロセスは、必ずしも一直線に進むものではありません。
アイデア出しのプロセスでよい解決策が見つからない場合は、共感や課題定義のプロセスに戻ることもあります。
ユーザーが本当に求めるものを生み出すためには、常にユーザーが困っていること、ニーズが常にアイデア創造のスタート地点になります。
アイデアが浮かばない場合は、ニーズの探求が足りないのかもしれません。
デザイン思考では各プロセスを反復しながら、解決すべきユーザーの課題やその解決策を磨きこんでいくことが重要です。
身近なデザイン思考の事例
ここまで読まれた方は「なんとなく意味はわかったけど、実感としてイメージが湧かない」と思っていることでしょう。
そこで、ここからは具体的に「デザイン思考」を捉えるための事例を紹介します。
ネットを見れば海外の事例はすぐ見つかるのですが、案外日本の事例はあまり公開されていません。
今回は、より身近な例として、ニジボックスの「イベント出展時のチラシ制作」の際に使われたデザイン思考をご紹介します。
ニジボックスはこれまで様々な展示会に出展してきました。
その展示会で、来場者がブースに足を止めて商談できるよう、サービス紹介のチラシを配っていました。
しかし、これがなかなか人々の足を止めることができず、「もっと魅力的なチラシにできないか…?」と考えました。
そこで、まずは「足を止めてくれない来場者」をターゲットとし、デザイン思考でソリューションを考えることにしました。
【共感】手荷物を増やしたくないからチラシを受け取らない?
ターゲットを理解するために、実際に展示会に出かけて、来場者をじっくり観察してみました。
すると、同じ来場者でもチラシを受け取る場合と受け取らない場合があることに気づきました!
その差異は何だったのでしょう?
結論は、事前に目星をつけた会社のチラシだけを受け取っている、ということ。
来場者は限られた時間で情報収集しようとしているので、事前に目星をつけた会社のブースにしか興味がないのです。
他の企業のチラシは、受け取ってもただの荷物になるだけ、と考えているようです。
【情報分析】効率的に情報収集したいと考えている?
ターゲットのニーズは、「情報収集はしたいが、手荷物を増やしたくない」こと。
そのニーズの背景にある状況は、
- IT担当者は普段、紙媒体を持たない
- 忙しい業務の合間を縫って来場したので、余計な時間や手間はかけたくない
- 来場後は情報収集し、整理した内容を上長に報告する予定
…といったもの。
このようにターゲットの付帯状況を整理・分析しました。
とにかく、彼らは「効率的に」情報収集・情報整理したいニーズがあることがわかりました。
【課題定義】そもそも、チラシにこだわる必要ってあるんだっけ?
最初の段階では「もっと魅力的なチラシがいいのでは…?」と考えていましたが、共感・情報分析のプロセスを経て、「展示会の来場者が受け取りやすい販促物はチラシである必要はないのではないか?」という視点に変わりました。
チラシにとらわれず、「受け取りやすい販促物」の形を考えることが、真の課題という仮説を立てたのです。
【アイデア】受け取りやすい販促物ってなんだろう?
荷物にならず、慌ただしく展示会を周っている人でも気軽に受け取りやすいものとは?
と考えた結果、「ポケットにしまえるような、もっと小さな販促物」はどうだろう?
というアイデアを思いつきました。
そこで、チケット型のチラシを作ってみることにしました。
スペースに限りはありますが、載せきれなかった情報はQRコードでWEBに誘導することに。
【プロトタイプ】細かいデザインは置いといて、とりあえず作ってみた
試作段階なので、チケットチラシのデザインなどにはこだわらず、まずは紙とペン、ハサミを用意して作ってみました。
【テスト】まずは200部印刷して配ってみた
いつもはチラシを1000部刷りますが、今回はあくまで「テスト」なので、プロトタイプを200部印刷。
展示会で実際に配ってみたところ、200部全て配り切り、半数ほどはブースに足を止めてくれました。
一定の効果は実感できたものの、チケットを渡そうとした全ての人が受け取ってくれたわけではないし、受け取っても足を止めない人も当然いました。
今後は、サービスのキャッチフレーズを2パターン用意してA/Bテストするなど、
来場者が足を止めてくれるデザインに改良することで、再度<共感>に戻ってソリューションの精度を高めていく予定です。
デザイン思考はイノベーションを起こす近道
「デザイン思考」という言葉を聞くと、人によっては馴染みのない難しい概念のように感じられるかもしれません。
でも、今回のチラシの事例のように、実はすぐに実践できる、どんな小さな業務でも活用できる考え方なのです。
現代のビジネスでは、とにかく「アクションする」ことが重要だと言われています。
机の上であれこれ考えていいアイデアが出たところで、それを行動に移さなければ何の結果にもつながりません。
デザイン思考は「すぐにアクションできる」フローになっているという意味で、現代ビジネスと相性の良い手法であるともいえます。
普段の業務はもちろん、社内の掃除当番の運用、チームMTGのやり方など、まずはあなたの会社の身近なところからはじめてみましょう!
このデザイン思考を日々使うことが、イノベーティブな新しいプロダクトを生み出すことにつながるのです!
さあ! デザイン思考を実践しましょう!
どんな手法やフレームワークでも、ただそれを知っているだけではビジネスの結果には結びつきません。
結果として実らせるためには、実際に実践する中で経験を積み、手法を自分のものにしてゆく必要があります。
では、手堅く、リスクを最小限に実施するにはどうしたら良いのでしょう?
それは、「実績のある経験者のプロセスを参考にする」ことも一つの作戦だと思います。
ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、デザイン思考をはじめとする様々なビジネス手法を実際にリクルートの新規事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。
今回、ニジボックスが幾多の案件を経験する中で、磨き上げてきたノウハウの一端を資料としてまとめ公開することにしました。
また、下記資料にて、これまでニジボックスがUXデザインを用いてどのようにビジネス立ち上げや成功を支援してきたのか、ビジネスフェーズごとに実施例を一部ご紹介しています。
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